©渋谷スクランブルスクエア©渋谷スクランブルスクエア

Experiences

Spotlight

NADが描く、未来のオフィス(前編)

2020.12.28

日建設計の越境するデザイン集団NADが創り出す、新たな価値を持つ建築

©渋谷スクランブルスクエア

COVID-19の拡大によって社会は大きく変化している。オフィスの在り方、働き方の変化もその一つ。さらなるオンライン化が進めば、オフィスは本当に要らなくなるのか。最新のオフィスをデザインする「NAD (NIKKEN ACTIVITY DESIGN lab)」のダイレクターを務める勝矢武之に、建築や空間を通して、これからのオフィス空間と働き方の未来構想について聞いた。

 

NAD(ナド)は、東京タワーや東京スカイツリー、成田空港といった日本のランドマークを数々手がけてきた老舗の建築設計事務所「日建設計」の一部署として、2013年にスタート。メンバーの多くは建築家やデザイナーだがリサーチャーやエンジニアなども抱えるなど、あらゆるプロフェッショナルによって構成された、通称「越境するデザイン集団」である。


「人口減少の時代にあって、すでに建築物のストックは十分あり、成熟した経済のもとでの新たな建築の価値が求められています。そのため、我々の仕事も単に求められた建物をデザインするという枠にとどまらなくなりつつあります。これから求められる建築物とは?企業成長を支えるオフィスとは? 昨今、迷いを持つクライアントが数多く日建設計やNADへ相談に訪れます。いま本当に求められているのは、機能を満たすだけの建築ではなく、オリジナルな価値や体験を生み出す場です。しかし、クライアント自身が本当に必要なものが何なのかをクリアに定義できていないことも多い。そこで、NADは従来のデザイナーの枠や立場を超え、クライアントと共に調査分析をして、新しい価値や体験を提案しています。そして時には時間軸も越えて、完成後の運用にまで関わっていきます。NADは新たな場を生み出すために越境していくデザイン集団なのです」。

NADがディレクションに関わる「ワークスタイリング」。ここは日本の新しい働き方を実現するために三井不動産が仕掛ける法人向け多拠点型シェアオフィス。 Photo by 鈴木 渉 NADがディレクションに関わる「ワークスタイリング」。ここは日本の新しい働き方を実現するために三井不動産が仕掛ける法人向け多拠点型シェアオフィス。 Photo by 鈴木 渉

NADがディレクションに関わる「ワークスタイリング」。ここは日本の新しい働き方を実現するために三井不動産が仕掛ける法人向け多拠点型シェアオフィス。Photo by 鈴木 渉


NADのプロジェクトの進め方は、まさにすべてにおいて越境をする。建築設計という従来の領域に止まらず、ユーザーたちとワークショップをしたり、リサーチャーがオフィスで調査をしたり、各企業の課題を共に検討していくプロセスを踏む。そしてクライアントと共にヴィジョンの構築、パイロットプロジェクトなど、ハードだけではなくソフトまでデザインをしていく。さらには、完成後も実際のワークスタイルの効果検証などを行って、長くその空間を進化させていくのだ。


体験をデザインする建築を生み出す、越境集団「NAD」

 

NADのダイレクターを務める勝矢は、世界で活躍する建築家の1人だ。直近ではスペイン・バルセロナの99,000人を収容できるサッカースタジアム「カンプ・ノウ」の改修の国際コンペを勝ち取り、2021年に東京で開催される世界的なスポーツイベントの会場となる「有明体操競技場」、「渋谷スクランブルスクエア」とその展望施設である「渋谷スカイ」などを手掛けたことで知られている。


2021年に東京で開催される世界的なスポーツイベントの会場となる競技場。 大会後は都が展示場として運営予定の「有明体操競技場」。 Photo by 鈴木研一 2021年に東京で開催される世界的なスポーツイベントの会場となる競技場。 大会後は都が展示場として運営予定の「有明体操競技場」。 Photo by 鈴木研一

2021年に東京で開催される世界的なスポーツイベントの会場となる競技場。 大会後は都が展示場として運営予定の「有明体操競技場」。Photo by 鈴木研一

「渋谷スクランブルスクエア」の全体構成と高層部及び頂部展望施設「渋谷スカイ」のデザインを担当した。Photo by エスエス東京 「渋谷スクランブルスクエア」の全体構成と高層部及び頂部展望施設「渋谷スカイ」のデザインを担当した。Photo by エスエス東京

「渋谷スクランブルスクエア」の全体構成と高層部及び頂部展望施設「渋谷スカイ」のデザインを担当した。Photo by エスエス東京


「2021年に東京で開催される世界的なスポーツイベントの会場となる『有明体操競技場』は、敷地がかつて貯木場のあるエリアだったことから、世界最大級の木製アーチの空間とともに、木を積み上げたようなデザインの屋外コンコースをデザインしました。観客は巨大な木の庇(ひさし)の下で海を眺めながら、この土地の歴史に想いをはせるのです。『渋谷スクランブルスクエア』では、屋上に展望台をつくりたいというクライアントからの要望を受けました。しかし東京には展望台がすでに数多くあります。そこで、混雑した渋谷の街から解放される舞台のような場所を考えました。そこで敢えて何もない巨大なデッキ空間をつくって、空とつながる都市の公園としたのが『渋谷スカイ』です。求められる機能を満たすだけでなく、建物の建つ土地と結びつき、ユーザーにそこにしかない体験をもたらすことが、これからの建築に求められていると考えています」。


新たな体験を生み出す空間を生み出す、NADダイレクター勝矢武之。 新たな体験を生み出す空間を生み出す、NADダイレクター勝矢武之。

新たな体験を生み出す空間をデザインする、NADダイレクター勝矢武之。Photo by 永禮賢

建築は空間をデザインするだけではなく、その街や人とのつながりをデザインすることだと勝矢は語る。NADは美しい空間をデザインしつつ、そこに新たな発想と遊び心をプラスして、私たちに発見と体験を与えてくれる。

 

後編ではNADが手掛けたオフィス空間と、未来のオフィス論を伺う。


 

(敬称略)

 

 

 

勝矢武之 Takeyuki Katsuya

日建設計 設計部門ダイレクター 兼 NAD室ダイレクター

京都大学大学院工学研究科建築学専攻を終了後、2000年に日建設計入社。2016年FCバルセロナのホームスタジアム「カンプ・ノウ」改修の国際コンペに当選。2019年、渋谷駅の再開発「渋谷スクランブルスクエア東棟(第Ⅰ期)」とその展望施設「渋谷スカイ」、「有明体操競技場」を担当。2020年より設計部門ダイレクターに加えて、NAD室のダイレクターを兼任。

 

 


最新情報をニュースレターでお知らせするほか、エクスクルーシブなイベントのご案内や、特別なプレゼント企画も予定しています。

ページの先頭へ

最新情報をニュースレターでお知らせするほか、エクスクルーシブなイベントのご案内や、特別なプレゼント企画も予定しています。