繊細な美観ながら、棚板一枚あたり80kgの耐荷重性能を持つ「Alex Products  Alex Shelf」

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2019年グッドデザイン・ベスト100(後編)

2019.10.29

今日のライフスタイルを豊かにする
グッドデザイン プロダクト7選

繊細な美観ながら、棚板一枚あたり80kgの耐荷重性能を持つ「Alex Products Alex Shelf」

デザインによって暮らしや社会をよりよくすることを目的とする、グッドデザイン賞。今日では高齢化社会、インターネットの登場、災害対策など、デザインにより複雑な視点が求められるようになった。

 

グッドデザイン賞ではかたちの有無にかかわらず、人がなんらかの理想や目的を果たすために築いたものごとをデザインと解釈し、審査対象としている。後編では2019年度のグッド・デザインベスト100の中から、人々の生活に寄り添い、ライフスタイルを豊かにするプロダクトをPremium Japanの視点で7つピックアップした。

自宅でもオフィスでも。
美しい空間を実現する白眉のプロダクト

1.「Alex Products Alex Shelf」
深澤直人(ナオトフカサワデザイン)によるデザインのアレックスシェルフは、オフィスや商業施設、住空間のためのシステムシェルフ。繊細な美観に加え、アルミ押出成形技術と棚板支持方法の開発(特許出願中)により、約10mmの厚みで棚板一枚あたり80kgの耐荷重性能を実現している。

 

従来の棚は、本やものを置くことにより棚そのものの存在が見えなくなる。しかし、アレックスシェルフはものが置かれていなくても、余白が美しいデザインに仕上げられている。荷重、美観を両立しながら、棚板の設置が容易に行えて落下防止の安全性を備えた設計となっているのも特徴のひとつ。また、棚板の厚みの中にLED照明も装備可能。照明を支柱断面に組み込むことで、配線によって美観を損ねることがない。こうしたディテールまでの細やかな配慮がなされている点が白眉といえる。

照明とクリアな音響で、空間を美しく満たす機能を兼ね備えたグラスサウンドスピーカー「LSPX-S2」 照明とクリアな音響で、空間を美しく満たす機能を兼ね備えたグラスサウンドスピーカー「LSPX-S2」

照明とクリアな音響で、空間を美しく満たす機能を兼ね備えたグラスサウンドスピーカー「LSPX-S2」

2.グラスサウンドスピーカー 「LSPX-S2」
ソニーのLSPX-S2は、照明とクリアなサウンドで空間を美しく満たす機能を兼ね備えたグラスサウンドスピーカーだ。デザインのポイントはコンパクトなサイズ、音質を最適化するための素材と形状、広範囲を優しく照らすLED照明。音響は透明な有機ガラス管を振動させ360度方向に音を広げる設計で、高音質化・ハイレゾ対応を両立している。

 

テーブル中央に置いても会話を遮らないような、コンパクトで居住空間に溶け込む佇まい。生演奏のようなリアルな音と柔らかな光の調和が、空間の演出に効果を発揮する。デザインは森澤有人、藤木 学(ソニー クリエイティブセンター)が担当。先行して開発されたLSPX-S1のコンセプトを踏襲しながら、テーブル上にも置けるコンパクトなサイズと高音質の両立を目指した。審査過程では電気製品のイメージの払拭や音だけでなく光が空間に与える安らぎなどが評価された。


産地活性化の契機をもたらした焼き物と
生活に寄り添う日用のテーブルウェア

「1616 / arita japan」は、世界中の食卓で使われる商品・ブランド開発を目標に、デザイナーと職人のコラボレーションにより誕生した。 「1616 / arita japan」は、世界中の食卓で使われる商品・ブランド開発を目標に、デザイナーと職人のコラボレーションにより誕生した。

「1616 / arita japan」は、世界中の食卓で使われる商品・ブランド開発を目標に、デザイナーと職人のコラボレーションにより誕生した。

3. 焼き物 [1616/arita japan]
デザイナー・柳原照弘が、経験豊富で高度な技術を誇る有田の人々とともに生み出した陶磁器ブランドが「1616 / arita japan」だ。新しい素材、多様な食生活を受け入れるシンプルな形状がポイントで、その柔軟性のある形状により用途を限定することがない。また、非常に強度のある高密度の陶土を用いていることも特徴のひとつと言えるだろう。

 

長い月日を経てもなお、世界中の食卓で使われる商品・ブランド開発を目標に、柳原は今までの有田焼にはないデザインとコンセプトを提案した。これは有田の職人たちの考え方を一変させ、伝統的技法だけでなく新たな技法を模索することにつながったという。審査員からは、「歴史的な産地の文化を振り返りつつ、現在の産地活性化の契機をもたらした」点が注目された。

日本とデンマークが融合されたスタイルを持つテーブルウェア 「HIBITO」 日本とデンマークが融合されたスタイルを持つテーブルウェア 「HIBITO」

日本とデンマークが融合されたスタイルを持つテーブルウェア 「HIBITO」

4. テーブルウェア 「HIBITO」
HIBITOは、高品質な日本のクラフト技術を世に伝えていくことを目的に開発された。「日々に寄り添う」ことを意識したこのシリーズは、セシリエ・マンツがデザインを担当。マンツが幼少時に暮らした、有田・波佐見地区の陶器がそのデザインに活かされており、日本とデンマークが融合したスタイルを持つ。シンプルで飽きのこない、タイムレスに愛用できるテーブルウェアとなっている。

 

プロダクトのすべてにおいて、ミリ単位以下で厚みと形状を調整。口当たりの良さ、手に持った時の握りやすさなど、使用感の良さを実現すると同時に、重ねやすさや洗いやすさといった機能性の高さも追求した。デザイン性と機能性の高さに加えて、購入しやすい価格も魅力だ。

アプリが抽出のテクニックをエスコート。抽出レシピを世界中のユーザーとオンラインで共有できるスマートコーヒーメーカー 「ジーナ」 アプリが抽出のテクニックをエスコート。抽出レシピを世界中のユーザーとオンラインで共有できるスマートコーヒーメーカー 「ジーナ」

アプリが抽出のテクニックをエスコート。抽出レシピを世界中のユーザーとオンラインで共有できるスマートコーヒーメーカー 「ジーナ」


抽出レシピを世界中のユーザーと共有できるコーヒーメーカー。
マッチとお香という伝統産業のコラボで生まれた着火式お香にも注目

5. スマートコーヒーメーカー 「ジーナ」
「毎日の一杯が特別なものになる」をブランドコンセプトに開発されたコーヒーメーカー。近年、多様化したコーヒーへのニーズに対して全自動マシンは不向きである一方、ハンドドリップでは好みの味を安定的に出すのは難しい。そんな全自動とハンドドリッパーの中間に位置するのが本製品である。

 

台座部分に計量器とBluetoothを備えていて、豆の計量やお湯の量、抽出時間をスマートフォン経由で正確に計測することができるため、好みの味をいつも出せる点が評価された。一つの器具で3つの抽出方法を実現。アプリが抽出のテクニックをエスコートしてくれるほか、抽出レシピを世界中のユーザーとオンラインで共有できる。珈琲を淹れる特別な時間に、アプリという機能を用いる新しい方法に個性を感じる。

「播磨のマッチ」と「淡路島のお香」がコラボレーションすることで誕生した着火機能付きお香 「hibi 10MINUTES AROMA」 「播磨のマッチ」と「淡路島のお香」がコラボレーションすることで誕生した着火機能付きお香 「hibi 10MINUTES AROMA」

「播磨のマッチ」と「淡路島のお香」がコラボレーションすることで誕生した着火機能付きお香 「hibi 10MINUTES AROMA」

6. 着火機能付きお香 「hibi 10MINUTES AROMA」
着火具がなくても手軽に使えるお香スティックとして開発されたのがhibiだ。従来のマッチの使い方そのままに、お香として使うことができる。燃焼時間が10分のため、忙しい日常に短時間のリラックスタイムを楽しめる発想がいい。マッチとお香、ともに国内生産シェア70~90%を誇る兵庫県の伝統産業「播磨のマッチ」と「淡路島のお香」がコラボレーションすることで誕生したというストーリーにも惹かれる。

 

デザインは堀内康広(トランクデザイン)が手掛けた。窓枠状のグラフィックはhibi=日日を表現したもので、タイポグラフィは煙が昇るさまをイメージしている。伝統産業の歴史と文化を未来へつなぐための「美しい回答」と審査員からはコメントされた。火のそばから離れたくない、短い時間でもリラックスしたいというマーケットニーズにも合致している。


「防災をライフスタイルに」という理念のもとにデザインされた「+maffs」の住宅用消火器 「防災をライフスタイルに」という理念のもとにデザインされた「+maffs」の住宅用消火器

「防災をライフスタイルに」という理念のもとにデザインされた「+maffs」の住宅用消火器

7. 消火器 「+ 住宅用消火器」
創業129年の老舗防災メーカーが立ち上げた防災ブランド「+maffs」の住宅用消火器。「防災をライフスタイルに」という理念のもと、従来のデザインと対極となる、住まいに調和するデザインを採用している。住宅の雰囲気にそぐわず隠されてしまいがちな消火器を、生活者が見える場所に置けるようにすることで、すばやい消火につなげることができる。

 

艶消しの白黒塗装、規格の範疇で最大限に洗練した表示に挑戦したデザインが、美しい住まいに無理なく調和する。ブランドの世界観を伝えるパッケージにより、生活雑貨として販路を拡大することができたという。忘れがちな使用期限をユーザー自身が書き込めるタグが付属している。自分の手を動かすことで記憶に残り、定期交換の認識を高める意図がある。

前編でも触れたように、高齢化社会、インターネットの登場、災害対策など、デザインにより複雑な視点が求められるようになった。複雑化する社会においてデザインの力がますます必要とされるのは間違いない。50年以上にわたり、Gマークとともに日本の視点でデザインの叡智を伝えてきたグッドデザイン賞は、今後も我々の豊かな生活の指針のひとつであり続けるだろう。

 

(敬称略)

【グッドデザイン大賞スケジュール】
10月31日(木)
大賞選出会(受賞祝賀会併催)、特別賞発表
13:30~16:30 受賞祝賀会&大賞選出会ライブ中継(グランドハイアット東京より)
13:30~14:30 グッドデザイン大賞投票受付(受賞店来場者投票)
投票会場:東京ミッドタウン(エリアAミッドタウン・ホールB 特設ステージ)
15:00頃    グッドデザイン大賞発表
18:30~19:00 特別賞記者発表会

 

【グッドデザイン賞受賞展「GOOD DESIGN EXHIBITION 2019」】
会期 10月31日(木)〜11月4日(月)
11:00~20:00 最終日 18:00まで/入場は閉館 30分前まで
会場 東京ミッドタウン各所(東京都港区赤坂9-7-1)
入場無料
http://archive.g-mark.org/gde/2019/index.html

 

→2019年グッドデザイン・ベスト100(前編)はこちら

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