田ノ浦半島の海辺にこの春オープンした宿「海音真理(うみおとまり)」の客室から望む風景。夕暮れ時の穏やかな光と瀬戸内海から吹く風に身をまかせる。

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海と空と大地、アートの島・小豆島へ(後編)

2019.6.28

小豆島に芽吹き始めた衣・食・宿の新カルチャーを体験する

田ノ浦半島の海辺にこの春オープンした宿「海音真理(うみおとまり)」の客室から望む風景。夕暮れ時の穏やかな光と瀬戸内海から吹く風に身をまかせる。

毎年、新しい店や話題のスポットが誕生し活気にあふれる小豆島。近年、若い人が移住し、この島ならではの自然を生かした食やセレクトショップ、そして洗練された魅力的な宿も誕生している。小豆島の「今」を訪ねた。

元そうめん工場の空間を生かして
新世代がつくる魅力的なカフェやセレクトショップ

瀬戸内国際芸術祭の開催など、小豆島には活気があふれている。その反面、人口減少など日本が直面している問題が身近にあるのも事実。しかし小豆島へ移住し、島の遺産を生かして、カフェやセレクトショップなどを始める若い人たちが近年増えているという。

 

キッチン「UCHINKU(うちんく)」もそのひとつ。UCHINKUとは方言で、我が家の意味。元そうめん工場を改装した、広い窓から光が入る明るいカフェ&キッチンでは、島の食材を使った創作料理を出している。太いそうめんにタイ風グリーンカレーを合わせた一皿など、創意工夫のあるランチが3~4種用意されている。ハンバーグもスイーツも美味。オーナーシェフの西本 真は京都出身で、30歳までに独立して店を持つという夢をここで叶えた。「小豆島は船でしか来られない島。それだけに特別なワクワク感がありますよね。この島でくつろいで楽しんで欲しい、と願いを込めた店です」。

鰆のフリット、自家製ハーブポークと野菜、自家製パンを盛り合わせたランチメニュー「デリカテッセン」。 鰆のフリット、自家製ハーブポークと野菜、自家製パンを盛り合わせたランチメニュー「デリカテッセン」。

鰆のフリット、自家製ハーブポークと野菜、自家製パンを盛り合わせたランチメニュー「デリカテッセン」。

UCHINKUの西本夫妻。小豆島出身の妻・理香が焼く自家製パンも美味。 UCHINKUの西本夫妻。小豆島出身の妻・理香が焼く自家製パンも美味。

UCHINKUの西本夫妻。小豆島出身の妻・理香が焼く自家製パンも美味。

 

キッチンUCHINKU
小豆島の新鮮な食材をふんだんに使った創作料理が人気。
11:30~15:30(LUNCH 14:00)、18:00~22:00
火曜定休(不定休)
小豆島町安田甲235-6
Tel:0879-62-8116


独自の審美眼が光る
ユニークなアイテムがそろうセレクトショップ

「うすけはれ」は中田地区のうっそうとした山の中にあるセレクトショップ。ここも元そうめんの工場だった。独自の審美眼で選ばれたウエア、アクセサリー、雑貨など洗練されたアイテムをそろえ、テーマに沿った企画展示販売も行う。店内にはカフェもあり、静かにお茶を楽しむにも最適な空間だ。天井には麺を乾燥させる扇風機があり、麺を納める棚がディスプレイに使われている。そうめん工場の名残が素朴な雰囲気を漂わせ、優しく創造的な空間を作り上げている。店名の由来は、元の麺工房の宇助(うすけ)という屋号にケとハレを組み合わせ、「うすけはれ」に。日常にも特別な時にもふさわしい店だ。イノシシの毛皮のポーチやバッグはオーナーの製作したオリジナルで、野生的な美しさが魅力だ。

上杉夫妻の審美眼で選ばれた服、陶器、雑貨がそろう。 上杉夫妻の審美眼で選ばれた服、陶器、雑貨がそろう。

上杉夫妻の審美眼で選ばれた服、陶器、雑貨がそろう。

カフェも併設し、ゆっくりとショッピングできる空間。里山の静けさになごむ。 カフェも併設し、ゆっくりとショッピングできる空間。里山の静けさになごむ。

カフェも併設し、ゆっくりとショッピングできる空間。里山の静けさになごむ。

野性的な毛並みやツヤがユニークな、イノシシの毛で作られたポーチ。 野性的な毛並みやツヤがユニークな、イノシシの毛で作られたポーチ。

野性的な毛並みやツヤがユニークな、イノシシの毛で作られたポーチ。

「うすけはれ」のオーナー、上杉夫妻。 「うすけはれ」のオーナー、上杉夫妻。

「うすけはれ」のオーナー、上杉夫妻。

 

うすけはれ
カフェを併設するセレクトショップ。火曜・水曜定休だが、季節によって無休営業の場合もあり、サイトで確認を。
https://www.usuqefare.com/


海の色、音、香り、味、
小豆島を全身で堪能する、
待望の宿「海音真理(うみおとまり)」

醬油蔵が並ぶ一角に建ち、小豆島の魅力を五感で体感させる「島宿真理(しまやどまり)」。古民家を美しく改装した全8室の宿は、洗練されたしつらいともてなしで絶賛されてきた。2019年4月、その近隣の田ノ浦半島の海辺に、別邸として「海音真理(うみおとまり)」がオープンした。離れの客室2棟を含む全6室は、和と洋を融合させて端正に整えられ、すみずみまで心の行き届いたもてなしでゲストを迎えている。

海を間近に感じる、田ノ浦を見渡すロケーションにある。 海を間近に感じる、田ノ浦を見渡すロケーションにある。

海を間近に感じる、田ノ浦を見渡すロケーションにある。

モダンで落ち着いた客室からも望むのは海。刻々と変化する空と海の色を眺める、贅沢な時間。 モダンで落ち着いた客室からも望むのは海。刻々と変化する空と海の色を眺める、贅沢な時間。

モダンで落ち着いた客室からも望むのは海。刻々と変化する空と海の色を眺める、贅沢な時間。

食事は海に面したテラスのある食空間で、夜は「オリーブ会席」を。全10品、瀬戸内の旬の素材にすしや炭火焼きの手法を取り入れた料理が流れるように続き、目と舌、海の音と移ろう光の中で、小豆島の神髄を堪能させてくれる。

姫人参、オリーブ胡麻豆腐、オリーブ地鶏など島の食材をふんだんに使った前菜の盛り合わせ。 姫人参、オリーブ胡麻豆腐、オリーブ地鶏など島の食材をふんだんに使った前菜の盛り合わせ。

姫人参、オリーブ胡麻豆腐、オリーブ地鶏など島の食材をふんだんに使った前菜の盛り合わせ。

瀬戸内海で採れた「にし貝」。貝の出汁をまとったそうめんが下に隠れている。 瀬戸内海で採れた「にし貝」。貝の出汁をまとったそうめんが下に隠れている。

瀬戸内海で採れた「にし貝」。貝の出汁をまとったそうめんが下に隠れている。

讃岐オリーブ牛、讃岐サーモン、島の野菜の炭火焼。 讃岐オリーブ牛、讃岐サーモン、島の野菜の炭火焼。

讃岐オリーブ牛、讃岐サーモン、島の野菜の炭火焼。

広々としたオープンキッチン、海が見渡せるモダンなレストラン。 広々としたオープンキッチン、海が見渡せるモダンなレストラン。

広々としたオープンキッチン、海が見渡せるモダンなレストラン。

 

海音真理
自家製の食品や雑貨をそろえたショップ「三風舎」とオリーブの恵みを全身で体感するエステサロン「島宿エステ」も併設。
https://uminoshijima.com/


アートと自然の恵み
懐かしさと新しさ
心を満たす小豆島の旅

瀬戸内国際芸術祭をきっかけに、訪ねた小豆島。アート作品を見て巡る旅は、新鮮な驚きと楽しさがみちていた。遥かに眺めた棚田や農村歌舞伎の舞台は、島の伝統と豊かさを、堂々と美しい姿で語りかけてくれた。カフェやセレクトショップには、若々しい時代の感性が息づいている。そして何より心に残るのは、船で海を渡った時間だ。行きは、期待感を胸に抱いて。帰りは、旅の充足感とともに。高速船で30分、フェリーで1時間のわずかな時間でも、この海は、日本そのものを屏風絵のように仕立てて見せてくれている。誰をも懐かしくあたたかな気持ちにさせる瀬戸内海は、ゆったりと静かに、旅する人を待っている。

Text by Misuzu Yamagishi
Photography by Noriko Kawase

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