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ミラノサローネにおける日本の存在感(前編)

2019.5.30

ルイ・ヴィトンもエルメスも。最新スタイルの発信源ミラノデザインウィーク

Louis Vuitton マルセル・ワンダース、アトリエ・オイ、カンパーナ兄弟など、創造力豊かなデザイナーが作品を発表するルイ・ヴィトン オブジェ・ノマド コレクション。写真右奥の「Blossom Base」をデザインした吉岡徳仁も名を連ねている。ルイ・ヴィトンはミラノデザインウィークの人気を牽引するブランド。© Stephane Muratet

アートもファッションも自動車も時計も。
年に一度、街をあげてのイベントに変容した
ミラノデザインウィーク

ミラノの国際家具見本市は、ミラノで数多く開かれる見本市の中で最大の動員数を記録する、重要な行事である。ミラノ郊外のローの見本市会場にて開催されるミラノサローネ(Salone del mobile: 国際家具見本市)とミラノ市内の随所で組織されるフオリサローネ(一般的にFuori Salone: サローネの外の意)を合わせて近年では、ミラノデザインウィークと呼ばれるようになった。インテリアだけではなく、ファッションブランドや時計ブランド、自動車メーカーなどの出展も増えている。

Salone del mobile 国際家具見本市、通称ミラノサローネと呼ばれるミラノ最大の見本市は郊外のローフィエラで開催される。写真は会場のメインゲート。入場料を支払えば誰でも入場可能。Photography by Hisayuki Amae Salone del mobile 国際家具見本市、通称ミラノサローネと呼ばれるミラノ最大の見本市は郊外のローフィエラで開催される。写真は会場のメインゲート。入場料を支払えば誰でも入場可能。Photography by Hisayuki Amae

Salone del mobile 国際家具見本市、通称ミラノサローネと呼ばれるミラノ最大の見本市は郊外のローフィエラで開催される。写真は会場のメインゲート。入場料を支払えば誰でも入場可能。Photography by Hisayuki Amae

Fuori Salone 近年特に人気の高い、ミラノ市街各地で開催れる展示はフオリサローネ(サローネの外の意味)と呼ばれる。写真は人気ブティックも多数の木の並べるブレラ地区。 Photography by Hisayuki Amae Fuori Salone 近年特に人気の高い、ミラノ市街各地で開催れる展示はフオリサローネ(サローネの外の意味)と呼ばれる。写真は人気ブティックも多数の木の並べるブレラ地区。 Photography by Hisayuki Amae

Fuori Salone 近年特に人気の高い、ミラノ市街各地で開催れる展示はフオリサローネ(サローネの外の意味)と呼ばれる。写真は人気ブティックも多数軒を並べるブレラ地区。Photography by Hisayuki Amae

ミラノデザインウィーク中は、年に一度のデザインの祭典にふさわしいさまざな展示やインスタレーションなどが街中に出現。Photography by Hisayuki Amae ミラノデザインウィーク中は、年に一度のデザインの祭典にふさわしいさまざな展示やインスタレーションなどが街中に出現。Photography by Hisayuki Amae

ミラノデザインウィーク中は、年に一度のデザインの祭典にふさわしいさまざな展示やインスタレーションなどが街中に出現。Photography by Hisayuki Amae


58回目を迎えた2019年のデザインウィークの観客動員数は、約38万人強。タクシーも、ホテルもレストランも満員である。一般市民も楽しみながらそこかしこの展示をのぞいて歩く。関係者やプレスのみが出席できるプレビューの日が過ぎれば、ミラノの市民や世界から訪れるデザインウォッチャー全員が参加可能な、年に一度の街を挙げてのイベントなのだ。

Louis Vuitton パラッツォ・セルベローニで開催されたルイ・ヴィトン オブジェ・ノマド コレクションより、吉岡徳仁の新作は伝統的なモノグラム・フラワーにインスピレーションを得た「Blossom Base」(写真テーブルの上)。©︎ Louis Vuitton Louis Vuitton パラッツォ・セルベローニで開催されたルイ・ヴィトン オブジェ・ノマド コレクションより、吉岡徳仁の新作は伝統的なモノグラム・フラワーにインスピレーションを得た「Blossom Base」(写真テーブルの上)。©︎ Louis Vuitton

Louis Vuitton パラッツォ・セルベローニで開催されたルイ・ヴィトン オブジェ・ノマド コレクションより、吉岡徳仁の新作は伝統的なモノグラム・フラワーにインスピレーションを得た「Blossom Base」(写真テーブルの上)。©︎ Louis Vuitton

Louis Vuitton パラッツォ・セルベローニの中庭では坂 茂 の「Paper Temporary Structure 」(紙の仮設構造物)が展示された。©︎ Stephane Muratet Louis Vuitton パラッツォ・セルベローニの中庭では坂 茂 の「Paper Temporary Structure 」(紙の仮設構造物)が展示された。©︎ Stephane Muratet

Louis Vuitton パラッツォ・セルベローニの中庭では坂 茂 の「Paper Temporary Structure 」(紙の仮設構造物)が展示された。©︎ Stephane Muratet

一方で、モードの祭典、ミラノコレクションの会場には、一般市民は足を踏み入れることはできない。招待状の有無で入場を制限されるからである。ジャーナリストやセレブリティだけではなく全員に一律に門戸が開かれるミラノデザインウィークに、世界的なファッションブランドが参加を見るようになった結果、一般市民とファッションブランドとの関係も、唯一、この時には開かれた存在となる。

©︎ François Lacour  ©︎ François Lacour 

Hermès 石積みの迷路のような空間の中に迷い込んだゲストたちが、オブジェ、ホームテキスタイル、ファニチャー、インテリア用ファブリック、照明など、「素材」をテーマにした、工芸品のようにクオリティの高いエルメスのホームコレクションに邂逅するという趣向。見事な手仕事の仕上がりはエルメスならではの完璧さ。©︎ François Lacour


ミラノデザインウィーク の会期中、エルメスの展示会場には一般消費者も、並びさえすれば入場ができる。ルイ・ヴイトンも同様である。モンテナポレオーネ通りの高級服飾店においても、エトロもグッチもロエべも、デザインウィークを意識したプレゼンテーションでウィンドウは整えられる。それらを眺めて歩くのも楽しみの一つになる。

Journey of a Raindrop:水の不思議な魅力 Journey of a Raindrop:水の不思議な魅力

ISSEY MIYAKE ミラノの旗艦店にてオランダ人デザイナーのヨーラン・ファンデルウィールとのプロジェクト「Journey of a Raindrop:水の不思議な魅力」を展示した。© ISSEY MIYAKE INC. Photography by Valentina Sommariva

バグッタ通りに旗艦店舗を構えて3年目のイッセイミヤケは、オープン以来毎年ミラノサローネ期間中にデザイナーやアーティストらと協働プロジェクトを行っている。今年はオランダ人デザイナー、ヨーラン・ファンデルウィールを起用。水が内部を動く透明なガラスチューブによるインスタレーションを店内数カ所に設置して、我々に水の存在を意識させることを目論んだ。

 

ミラノサローネとは、一般消費者にとっては、ファッションもデザインも一緒になって街中が自分たちに向かっても開かれ、夜更けまで続くパーティにまで参加ができるという、夢のような数日間なのである。


ミラノデザインウィーク開幕に合わせて
ARMANI / SILOSでは
安藤忠雄の展覧会がスタート

ARMANI / CASA ARMANI / CASA

ARMANI / CASA 新作のテーマは自然と東洋。畳をモチーフにした素材使いや、紅型の風景が描かれた「Okinawa」ファブリックなど、日本のモチーフを使用したアイテムも登場。写真は、新作「Ohara」デスク。© Fabrizio Nannini

ジョルジオ アルマーニは、インテリアブランド ARMANI / CASAの新作発表を本拠地 ARMANI / TEATROで発表すると同時に、文化複合施設ARMANI / SILOSでは、安藤忠雄の展覧会『Tadao Ando. The Challenge』(7月28日まで開催)をデザインウィークに合わせてスタートした。ARMANI / TEATROを設計した安藤忠雄は 、開幕の記者会見において、「言葉を介してではなく通じ合えるアルマーニ氏との関係」を語り、翌日のミラノ工科大学での学生を対象としたセミナーでも、建築家の共同作業の重要さや明確に自分の考えを貫くことの大切さなどを語って、会場は大きな拍手に包まれた。

Courtesy of Giorgio Armani Courtesy of Giorgio Armani

Courtesy of Giorgio Armani

© SGP © SGP
ARMANI / SILOSの展覧会でのジョルジオ アルマーニと安藤忠雄。日本人の深い感受性、そして安藤忠雄の建築哲学と緻密な空間構成に感銘を受けたジョルジオ・アルマーニが、「ARMANI / TEATRO」(2001年)の設計を依頼したことから二人の親交が始まったという。 © SGP

世界的に活躍をする3人の著名な女性建築家、デザイナーとのコラボレーションによるバッグを昨年9月のミラノコレクションで発表したプラダ。その一人である妹島和世のバッグは、デザインウィーク中にガレリアのプラダ本店のウィンドウディスプレイを彩った。妹島はミラノのボッコーニ大学の新校舎を建設中でもある。この両名の日本を代表する建築家の存在感にも、ミラノにおける日本人クリエイターの役割が定着しつつあることが見て取れる。後編では2019年ミラノデザインウィークに出展した日本ブランド、日本のデザイナー、クリエイターを紹介する。

(敬称略)

 

ミラノサローネにおける日本の存在感(中編)につづく

Text by Miyuki Yajima

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