夢十夜 301号室夢十夜 301号室

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2023.2.28

「夢十夜」文豪が愛した湯河原で本とたわむれ、温泉にゆるむ不思議宿


東京駅から新幹線と東海道線に乗り継いで1時間ほどで、湯河原駅にたどり着く。かつて夏目漱石、芥川龍之介、与謝野晶子、谷崎潤一郎など日本を代表する文人が執筆や療養のためにこぞって滞在した湯河原に、昨年秋、ある老舗旅館がリノベーションして、“文学温泉旅館”として見事に蘇った。その名は「夢十夜」。10の不思議な物語を綴った夏目漱石の短編集『夢十夜』になぞらえて、命名された。

 



昭和の風情に、ポップなニュアンスが加わった不思議空間

 

館内は私たちを夢の世界に導いてくれるもので溢れている。建物はもともと味わい深い昭和初期の建築。往時の旅館の風情を生かしながら、これまで見たこともないような、不思議でポップな空間が広がっている。

 

客室はそれぞれ異なる工夫が凝らされているので、好みに合わせて部屋選びをしたい。4タイプ、計19室の客室があるが、共通しているのは主役が本だということ。テレビはなく、替わりに100冊の本とハンモック、コーヒーミルなどが用意されている。

 

小説、エッセイ、写真集、マンガ、ビジネス本など、客室内に置かれている本のジャンルはさまざま。気の向くままにパラパラと流し読んでもよし、じっくりと1冊に向き合うのもよし。自分で豆から挽いたコーヒーを味わいながら、ただただ自由に、怠惰に、本とたわむれることができる。

 


301 301

ベッドの下に本が積まれているようなディスプレイが楽しい301号室。雲を表現したテーブルやソファといったオリジナリティ溢れるユニークな家具が置かれている。


209 209

スイートルームの209号室。クッションの海に身体を沈めて、ランプの灯りの下で黙々と読書する。黒い衝立の向こうはベッド。「夢十夜」のリノベーションを担当したのはUNSCAPE、家具やコーディネートは木村スタジオが、本などのセレクトも担当した。


208号室 208号室

ベッドに寝転んで乱読する自由。ドラマティックな段差が特徴の208号室。ブックカフェを貸し切ったような気分になれる空間だ。


誰も体験したことのない温泉旅館の新しい試み

 

 

パブリックエリアで特にユニークなのは、約300冊の本が並ぶライブラリー「白昼夢」だろう。ここに置かれているのはソファではなく、ベッド。横になりながら読書をして、気づけば現実から遠ざかっている……。そんな夢のような時間を過ごしてもらうのが狙いなのだという。

 

ジャンルなどおかまいなしに、ランダムに存在する本たち。普段なら手に取らないような本に、思わず出合ってしまう偶然の妙。それが「夢十夜」の狙いなのだ。


ライブラリー ライブラリー

ライブラリーには300冊ほどを用意。ベッドにごろりと身体を横たえて、さらに本と遊ぶ。


レストラン「燭(しょく)」もとてもユニークだ。店内は鏡で作られた空間で天井からは本のランプが降り注ぎ、まさに夢の世界に迷い込んだような錯覚に陥る。料理は本格的で、フランスでの料理経験を持つ総料理長によるイノベーティブ・フュージョンを提供。甘いクリームとメープルシロップが合うポップオーバーやフォカッチャのおかわりは自由で、お腹も心も満たされる。


燭(しょく) 燭(しょく)

レストラン「燭」の夕暮れ。張り巡らされた鏡にライトが反射し、あやしく煌めく。


夕食 夕食

スチールウールに火を灯し、肉や付け合わせの野菜を加熱する。火がさわさわと燃え尽きる様子が美しいプレゼンテーション。


夢のような物語に、新たな夢を重ねていく旅

 

湯河原と言えば、もちろん温泉。「夢十夜」にはこの名湯を堪能できる大浴場が二つある。湯河原を舞台にした夏目漱石の小説『明暗』から、それぞれ「明湯」「暗湯」と名付けられている。「明湯」はパステルのタイルや鮮やかなステンドグラスをあしらい、横になれるヒノキのベンチも置かれていて、心がリラックスして明るくなるようなお風呂だ。寒色系のステンドグラスが落ち着きのある「暗湯」は窓の外を流れる川の高さに近く、せせらぎの音が耳に心地よい。どちらも壁面に映像が投影され、湯けむりの中で見る不思議な光景が夢の世界に案内してくれる。

 


明湯 明湯

温かみのあるステンドグラスに心和む「明湯」。


暗湯 暗湯

寒色系のステンドグラスの光が、心落ち着かせる雰囲気の「暗湯」。


どこにもない、「夢十夜」だけにしかない時間に漂う

 

こだわりの逸品を集めたショップ「夢商店」は、“夢を持ち帰る”をコンセプトにした不思議空間になっている。レトロ感ある店内にたくさんの本に埋れてお土産の数々が点在しているのだ。地元作家の手仕事の逸品や湯河原特産のジュースやジャム、自家焙煎の美味しいコーヒー、フレーバーポップコーンなど選び抜いたお土産が揃う。

 

 


フロントと夢商店 フロントと夢商店

フロント横で展開する「夢商店」。スタッフが湯河原近辺の作家やショップに足を運び、直接交渉。ここならではの商品展開が実現した。Photography by KENZO KOSUGE

「夢十夜」があるのは湯河原の発祥の地、湯元通り。石畳の入り組んだ狭い路地に明治や大正の時代に建てられた旅館が点在し、文人たちの足取りを感じることができる。少し足を伸ばせば、「万葉公園」や「不動滝」といった自然を堪能できる散策スポットもある。オープンしてまだ日が浅いが、すでに毎月訪れるリピーターも存在。また、1泊では物足りないという声も多く、連泊プランも用意しているという。数日滞在し、自然の中で本を片手に夢のような体験をすれば、癒しと共に何らかの気づきを得られるに違いない。

夢十夜

神奈川県足柄下郡湯河原町宮上535


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