「キスヴィン 甲州 2020」 「キスヴィン 甲州 2020」

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2022.1.12

「キスヴィン 甲州 2020」斎藤まゆと荻原康弘の追求が織りなす甲州を味わう



キスヴィンワイナリーの甲州の栽培方法は、他と少し違う。古来より日本で栽培されている甲州という品種は、日光が当たって熟してくると、果皮が緑から藤紫色になる。果皮に色がつくと渋味や苦味の成分も増えるので、一般的な甲州の白ワインは特有の苦味が出てしまう。そこで、オーナー兼栽培責任者の荻原は、ひと房ごとにクラフト紙の傘をかけて日光を遮断した、通称「エメラルド甲州」を育てた。果皮が緑のままブドウの糖度が上がったことで、斎藤の理想とする和柑橘のほろ苦さに甘さと酸が調和する甲州ワインができるようになった。

 

 



ワインは八朔や青リンゴの爽やかな香りの印象がある。その香りの中にはハーブ、丁子、酵母の香り、濡れた石のような引き締まったミネラルのニュアンスも感じる。それぞれの香りの要素は決して強くはないが、繊細さと複雑さを兼ね備えている。そしてフレッシュな酸味や和柑橘のような果実味が軽快さをワインに与えており、澱の接触からくる旨味やコクが味わいの中盤に厚みをもたらす。

 

料理に合わせるとしたら、ヒラメ、スミイカ、中トロ、ハマチなど寿司と一緒に楽しむことをおすすめしたい。ワインの多くは生魚の臭みを助長させてしまうのだが、甲州ワインは魚の臭みが出にくい特性がある。いちじく、桃、梨、ブドウのようなフルーツと生ハムの塩味をあしらったサラダも、甲州の果実味をより感じる組み合わせとしておすすめだ。山梨の友人は、甲州ワインのつまみにいつも漬物をすすめてくれる。大根の浅漬けに柚子の皮を少し入れると柑橘の風味がワインとリンクする。たしかに発酵食品同士。合わないわけがなかった。



「キスヴィン 甲州 2020」 「キスヴィン 甲州 2020」


キスヴィン 甲州 2020

造り手: Kisvin Winery / 醸造責任者 – 斎藤 まゆ、代表 – 荻原康弘
所在地:山梨県甲州市
品種:甲州 100%
特徴:2013年よりワイナリーとして醸造スタート。ブドウ栽培農家3代目の萩原の質の高いブドウと、そのブドウのポテンシャルを見事に引き出す醸造責任者・斎藤のワイン造りは着実にファンを増やし続けている。2020年4月にNHK「プロフェッショナル仕事の流儀」にて斎藤が紹介され、ますます入手困難なワインとなっている。
合わせる料理:お寿司にワインを合わせたいなら、キスヴィン甲州は色々な寿司ネタとも楽しめる懐の深さがある。軽快さを合わせるならフルーツと生ハムのサラダと共に。クリーミーなテクスチャーを感じるワインなので、モッツァレラチーズを添えても尚よし。漬物との相性が意外にいいのも見逃せない。

価格:2,530円(税抜)



松木リエ Rie Matsuki
ソムリエ WSET® Level 4 Diploma、A.S.I.世界ソムリエ協会認定 International Sommelier Diploma- Gold。タイユバン・ロブションなどを経て2006年渡仏。南仏にて世界最優秀ソムリエのエンリコ・ベルナルド氏に師事し、その後パリの星付きレストランで6年間ソムリエとして従事。帰国後マンダリン オリエンタル 東京のソムリエを経て独立。現在はキャプラン ワインアカデミーなどで講師をつとめるほか、ワインの普及のための活動を行なっている。


Text by Rie Matsuki
Photography by Sogen Takahashi(amana)

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