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酒造りの誇りを胸に。世界が認める日本酒・蔵元選

2020.2.26

2. 満寿泉を育む街・富山市岩瀬を世界へ誇れる街へ 五代目桝田隆一郎の未来を描く力

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富山県富山市の北部に位置する岩瀬。江戸時代から明治半ばまで、北海道から大阪までいくつかの港町に寄港しながら、膨大な物資を運搬していた廻船、すなわち北前船の寄港地として栄えた。いま岩瀬を歩けば、廻船問屋の壮麗な屋敷など、江戸、明治期に建てられた家屋が多く残っていることを発見する。旧北国街道の古い街並みが美しく整備されて残っていることに感激するが、その仕掛人のひとりが今や富山を代表する蔵元となった、満寿泉(ますいずみ)を擁する桝田酒造店の五代目、桝田隆一郎だ。

 

桝田酒造店は明治26年(1893年)創業。先代の桝田敬次郎は大学院で発酵工学を修める予定が先々代の急逝により22歳で当主になる。吟醸酒が今日のように広まっていない昭和40年代半ば、リスクを覚悟しつつ吟醸酒造りを始めた。酒蔵としての生き残りを賭けた選択だったが結果はすぐに表れ、多くのコンクールで金賞受賞を重ねていく。桝田酒造店は、吟醸酒のパイオニア的存在となった。

 

桝田酒造店のモットーは、美味求真。美味しいものを食べている人しか美味しい酒は造れないと桝田はいう。甘エビ、シロエビ、ホタルイカ、ズワイガニなど海産物が富山湾の氷見漁港から揚がり、山からは山菜が豊富に集まる土地柄。自然の滋味あふれる素材に合う酒を追求すると、桝田にはいま流行りの日本酒のスタイル、淡麗辛口では物足りなく思うそうだ。なるほど、桝田酒造店の日本酒は、しっかりとした骨格と個性が際立つ。

「満寿泉 純米大吟醸 土遊野」 720ml 3,000円(税抜) 「満寿泉 純米大吟醸 土遊野」 720ml 3,000円(税抜)

「満寿泉 純米大吟醸 土遊野」 720ml 3,000円(税抜)

桝田が岩瀬の街づくりに寄与しはじめたのは20年ほど前のこと。旧材木店を購入し、蕎麦屋に入ってもらったことをきっかけに、その後も取り壊される予定の土蔵や家屋を購入し、大規模なワインセラーや日本酒セラーを持つ酒商 田尻本店もオープン。ガラス作家、木工作家など若手のアーティストも集まってきた。そして2004年、岩瀬まちづくり株式会社を発足するに至る。ここまで書くと桝田が岩瀬の街を引っ張っていくように思われるかもしれない。しかし桝田はそんな意気込みはないとさらりという。「廃れていく物件を購入しリノベーションすれば大工さんに仕事ができる。そこに入るレストランやアーティストがいる。そして桝田酒造店の酒を飲んでもらう場所ができる」。街づくりは誰のためでもない。ここで酒を造り、継続していく自分たちのためでもあるのだ。

 

私は酒サムライ活動を通じ、日本酒を世界へ発信しているが、日本酒を広めるということは、文化を広めるということにほかならないのだと、つくづく思う。それを実践する桝田の酒造り、そして岩瀬の街おこしに挑み未来を描く力に、これからも注目していきたい。

 

(平出淑恵 談)


桝田酒造店五代目の桝田隆一郎は、酒造りと街づくりは、文化をまとうことが大切だと語る。 桝田酒造店五代目の桝田隆一郎は、酒造りと街づくりは、文化をまとうことが大切だと語る。

桝田酒造店五代目の桝田隆一郎は、酒造りと街づくりは、文化をまとうことが大切だと語る。

平出淑恵セレクト 「満寿泉」おすすめの2本

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シーバスリーガルの原酒の熟成に使用したアメリカンオーク樽に、特徴の異なる数種の満寿泉を熟成させるという、ユニークな試み。「ウィスキーの樽香が広がり、はちみつのニュアンスを感じます」と平出。ウオッシュ系のチーズとの相性もよい。
種類:純米大吟醸酒
原料米:山田錦
精米歩合:35%のものを中心に数種類ブレンドしている
日本酒度:非公開
720ml  5,500円(税抜)

 

満寿泉 純米大吟醸 土遊野
富山の料理人たちから一目置かれている農業集団「土遊野」が棚田で栽培した伊勢神宮ゆかりのイセヒカリから醸した。「有機栽培棚田米、それもイセヒカリというお米で醸すというユニークなコンセプト。シルキーな味わいで食事にもよく合います」と平出。
種類:純米大吟醸酒
原料米:イセヒカリ
精米歩合:50%
日本酒度:非公開
720ml  3,000円(税抜)

 

◆満寿泉 桝田酒造店
富山県富山市東岩瀬町269
076-437-9916

平出淑恵 Toshie Hiraide

1962年生まれ。日本酒の国際化からインバウンドの地方誘客を目指す株式会社コーポ幸 代表取締役。酒サムライコーディネーター。IWCアンバサダー。昇龍道大使(中部・北陸9県のインバウンドアンバサダー)

 

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日本酒の誇りを取り戻し、日本酒文化を日本国内のみならず、広く世界に伝えていくために、若手の蔵元の全国組織「日本酒造青年協議会」が2006年から始められた活動「酒サムライ」。Sake から観光立国をという夢を実現すべく活動する酒サムライ コーディネーター 平出淑恵が選ぶ、日本酒好きなら一度は訪れるべき個性豊かな酒蔵と、そこで味わいたい日本酒を紹介していく。

 

(敬称略)

 

 

 

Photography by Haruko Amagata

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