新作振袖「寿松彩映」(千總)

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令和にまとう初春のきもの 逸品選

2019.12.30

4. 人生の晴れ舞台にふさわしい、芸能衣装を彷彿とさせる振袖

新作振袖「寿松彩映」(千總)

成人式や婚礼など人生行事に欠かすことのできない晴着。その形や模様、色彩には日本の伝統が凝縮され、女性を美しく輝かせる。日本人の美意識が込められ、令和にふさわしく現代的に昇華された逸品を毎回選りすぐり紹介する。

日本人の美意識を感じるふたつの文様を大胆に配置

室町時代、時の権力者に庇護され大成した能楽の演者が着用し、染織の粋(すい)が集められた能装束をはじめ、狂言、歌舞伎衣裳、舞踊衣裳など古典芸能に着用された服飾は総じて芸能衣装と呼ばれる。演者の役どころを意図したり、舞台映えする柄や柄ゆきは、現代のきものにも多く取り上げられている。

金地に束ね熨斗の袋帯で吉祥の心をさらに高めて 金地に束ね熨斗の袋帯で吉祥の心をさらに高めて

金地に束ね熨斗の袋帯で吉祥の心をさらに高めて

振袖「寿松彩映」もそうした芸能衣装の風情が感じられる一枚だ。形のない霞をカタカナの「エ」のような形に意匠化されたヱ霞文様を黒で表現、白地とのコントラストも潔い。加えて大きく強い色の笠松が大胆かつ、豪華に配されている。祝儀の意が色濃い松を題材にした文様は数多くあるが、松葉を笠のように図案化し重ね表された笠松はその代表的な文様のひとつである。日本人の美意識と粋(いき)が感じられるふたつのモチーフをまるで芸能衣裳のように表したきものは大胆にして、様式美に満ちあふれている。

 

また、鮮やかな朱、緑、水色の松葉の表現の異なる笠松の上前や肩など、視線の集まりやすい部分については色糸の刺繍や金駒刺繍、金箔置きといった加飾が贅沢に施されており、吉祥柄の金の袋帯との帯合わせで、豪華かつ華やかな一枚として存在感を放つ。


笠松とヱ霞を取り合わせた構成でおめでたさを表現 笠松とヱ霞を取り合わせた構成でおめでたさを表現

笠松とヱ霞を取り合わせた構成でおめでたさを表現

合わせた帯の柄は、金地に束ね熨斗(のし)文様。熨斗は現在でものし袋やのし紙の右上に添えられている模様のルーツになったもの。昔は祝儀の進物には乾燥させ、のした鮑を和紙に包んで祝儀の進物に添えた。この様子を、帯状のものを束ねデザイン化したものが束ね熨斗文様だ。おめでたく、改まった印象の文様の代表格として振袖をはじめ、フォーマルなきものの題材によく用いられる。吉祥のモチーフを詰めた伸びやかな束ね熨斗が表されたこの袋帯が、装いを格調高く寿いだ印象をさらに高めている。

製作:千總
価格: 1,300,000円(税別/編集部調べ)

http://www.chiso.co.jp/

http://www.chiso.co.jp/lp/furisode2020/

text by Akira Tanaka

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