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美の定義に革命を起こす吉川康雄(後編)

2021.5.20

迷いなく自分を愛せば、強く生きられる。メイクアップアーティスト吉川康雄の革命的コスメ論

自分の顔を受け入れて、迷いなく自分を愛してほしい。それは自信となり、生きる力へとつながっていく。そのときに味方となるような美容のアイデアや具体的なツールを形にして世に送り出すーーメイクアップアーティスト・吉川康雄の新ブランド「UNMIX」に込められた想いとは。

 

 

覆い隠すのではなく、自分の個性が透けて引き立つメイクツールを開発

 

「人の顔はみんな違う。顔の大きさや、パーツの形や配置、肌の色といった生まれ持っての〝つくり〟はもちろんのこと、その人のキャラクターであったり雰囲気も人それぞれです。洋服の場合はある程度、『こういう肌の色にはこの系統の色が映える』といった相性に縛られることがあります。でも、メイクの場合はそれがない。僕が作るプロダクトは、肌の色も年齢も関係ありません。誰が使っても似合うし、美しくなれるというところを追求しています」

 

その秘密は、「うっすらと透ける」ように調整された発色と、「もともとの肌の質感を覆わない」処方にある。素材の色や厚みで肌を包む洋服と違って、透ける仕上がりの薄膜メイクアップは、もともとの肌色とのせた色が、肌の上で混じり合う。

 


インタビューを受ける吉川康雄 インタビューを受ける吉川康雄

「肌のかげりや唇のくすみを消そうとするのではなく、活用するんです。ベージュや茶色やグレーや褐色。そういった肌にもともとある色味と、メイクアップの色をブレンドしていくことで、その人だけの色になる。それってメイクをしていてとても楽しいし、絶対的に似合うんです。その人らしい魅力が際立ちます」

 

いわば、使う人の肌の上だけで実現される、世界にひとつだけのテーラーメイドカラー。

 

「カタログから選んで『この顔になりたい!』と選んで真似するようなメイクではなく、自分の顔をいかに引き立てるか、美しく際立たせるか、というところを楽しんでほしい。美は選べるものではなく、持って生まれたもの。そのことに気づいた人は、魅力的になれます」


あなたは美しい。自分を好きになってほしい。いろいろな方法でそれを伝えていく

 

UNMIXのプロダクト第一弾として誕生させたのは、血色のリップカラー。

 

「リップスティックを直接、唇にすべらせて使います。一般的なリップと比べると、感触が硬くてあまり色がつかないことに驚くと思います。僕のメイクは、ベターッと覆い隠さないことが信条。敢えて固い感触にして、薄く透ける膜で唇を包みます。だから、濃く付きすぎて唇だけが悪目立ちしたり、くずれてにじむといった失敗もありません」

 

その上で、〝メイクする喜び〟も楽しめる工夫がこらされている。

 

「ただ単に『あなたの顔になじんで美しく仕上がります』で終わるのではなく、もうちょっと先の『メイクを楽しむ』遊び心まで考えて色を設計しています。たとえば同じ血色でも、青味のあるピンクなら、はかなく繊細な雰囲気に。一方で黄みがかったオレンジならば溌剌とヘルシーな印象に。混じる色味が変わることで、雰囲気も変わる。本来、美容は楽しいものだし、心浮き立つもの。まずは月に1本ずつ、新色を増やしていく予定です」

 

美容の究極の目的は、自分を愛し、楽しむこと。吉川の想いは、広告ビジュアルにも現れている。


知り合いのグラフィックデザイナーがモデルをつとめ、吉川自身が撮影した。普通に暮らす、普通の女性であっても、誰の真似でもない、自分だけの美しさを見つければいいと語る。


写真左からモイスチャーリップスティック グロウ  02 ピンクサファイア 3,960円、モイスチャーリップベース3,630円/すべてUNMIX

 

 

「出演してくれたモデルさんは、知り合いのグラフィックデザイナー。つけているリップカラーは『レッドローズ』という色ですが、僕が暮らしているNYの自宅に咲いた野ばらにインスピレーションを得ています。日常とかけはなれたドラマティックな夢の世界ではなく、日々暮らしている環境であったり、生活の中で目に見えるものや触れるものを愛おしいと思う気持ちを大切にしていきたいと思う。それは、毎日を生きる自分を愛することにつながります。だから、モデルの彼女は恋人に媚びたり、見る人を挑発するような顔はしていないんです。リラックスして心地よく過ごす、日常の何気ない瞬間を切り取っています」

 


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UNMIXのメッセージを伝えるメディアとして、2019年にWebメディア「unmixlove」も開設。吉川自身が世界で活躍するさまざまな女性にインタビューしている。

 

「世の中にはいろいろな人がいる。インタビューを通して、自分を認めたり、大切にして生きるにはいろいろな方法がある、ということが伝わるといいな、と思っています。インタビューをする中で、彼女たちの持ち物を撮影させてもらうこともあります。ものすごく決断力や行動力があって、本人も『私、男っぽい性格なんです』と自己分析している社長さんが、バッグの中に入れているポーチや化粧品はキラキラと〝姫〟っぽさ満載だったりする。そんなギャップも魅力的だと感じます。きっと、読者の中には、イメージしている自分と現実にギャップがある、今の自分に自信がもてない、と悩んでいる人がいっぱいいると思う。そんな人に、悩む必要なんて全くなくて、そのギャップも素敵、あなたらしい、と気づいてもらえたら嬉しいですね。

 

→美の定義に革命を起こす吉川康雄(前編)へ

 

吉川康雄 Yasuo Yoshikawa

1983年にメイクアップアーティストとして本格的に活動を開始。1995年に渡米。2008年から2019年3月までCHICCA ブランドクリエイターに就任。現在は、ニューヨークを拠点にファッション撮影はもちろん、広告、コレクション、セレブリティのポートレイトなど、世界のトップメイクアップアーティストとして活躍中。2019年、Webメディア「unmixlove」をスタート。2021年春、自身のメイクアップブランド「UNMIX」を立ち上げる。UNMIXとは、「混じり気のない」という意味。

 

Text by Junko Morita
Photography by Hyemi Cho(amana)

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